朝日だ、と言ったのはセッツァーだった。
セリスは、彼がここにいることに今まで疑問を持たなかった。だが、そもそも天使は単独で行動するのが普通なのだ。特に親しい天使などもいないことが普通だ。
何故、頻繁に自分を訪ねるのか。偶然、ではありえない。セッツァーは意図的にセリスの傍に近寄ってきていた。
「……綺麗」
海辺の建物の屋根に座り、セリスは目を細めて朝日を眺める。砂浜には、最期の時を寄り添い合う男女が見える。
セリスには見えるもの全てが、美しく見えた。
「セッツァーはどう感じるの?やっぱりもっと色々?」
横に座る黒翼の天使を振り返ると、セッツァーは首を振った。
「同じだ。ただ、綺麗だと思う」
その紫の瞳は、相変わらず目付きが悪いのだが、セリスを真っ直ぐに見つめている。
何故だか気恥ずかしくなって、セリスは砂浜に視線を戻した。
「……最近、気がついたんだけど」
「あ?」
「貴方はどうして私と一緒にいるわけ?」
「んなもん、訊くまでもなく決まってら」
セッツァーは黒翼をわずかにはばたかせて笑う。
あなたは天使を信じますか?
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