セツセリ

あなたは天使を信じますか?

 ドマについた時には、既にレイチェルの余命はあと四日しかなかった。
 それから毎日クタクタになるまで観光して、ついに、あの天使が言っていた最後の日に、なってしまった。
 俺は最後に、ドマで見られる世界一の朝日を見たいと思って、レイチェルと共に海辺に向かっていた。
「まだ薄暗いね」
 時刻は深夜とも早朝ともわからない。寒がりなレイチェルは、俺の腕にしがみついていた。
「なあ、覚えてるか?」
 急に話し始めた俺を、レイチェルは見つめる。
「俺が今よりももっと無名でどうしようもないヤツだった時さ、おまえが言ったんだ」
「「ロックが輝けることをしてほしい。そういうあなたを見ていたいから」」
 俺にとって、この言葉はなによりも支えになっていた。
「覚えてるよ」
「……まだ、全然おまえを食わせていけるだけの収入なんてないんだけど。俺さ」
 さく、と足下の感触が砂地に変わる。水平線はもうすぐ、見えるだろう。
「おまえと結婚したいんだ」
「……ロック?」
「こんな早くに言うつもり、なかったんだぜ」
 俺は精一杯、笑う。
「ありがとう。ロック」
 ぎゅ、と腕をよりいっそう強く掴み、レイチェルはか細い声で呟いた。

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