いつまで朝日を眺めていたのだろう、気がつけば周りには俺たち以外の人影も現れ始めていた。
一応、この砂浜はそれなりの人気スポットで、ちらほらと露店商の姿が見える。
「……あ、そうだわ。喉は渇かない?」
「ん、少しな」
「じゃあ買ってくるから、待ってて」
「!いや、俺も一緒にいくよ」
「大丈夫、別にすごい遠くじゃないし。急に過保護なんだから」
レイチェルは立ち上がり、服についた砂を片手ではたく。
「うわ、俺の近くでやるなよな」
俺の方に飛んできた砂を、苦笑いしながら俺もはたいた。
「てか、もう違うとこ行くか?普通に朝飯食いに行こうぜ」
「それもそうね」
なんとかレイチェルから離れまいと、俺は必死だった。
砂浜から上がると、露店商が準備を始めていて、街道沿いにはずらりと出店が並んでいた。
「……あそこ、もう開いてるかな?」
「あれはアクセサリー屋だな。飯屋はないのか?」
そうして、俺はにわかに辺りを見回す。ほとんど観光用のお土産屋ばかりで、そういう店はなかなか見当たらない。
仕方ない、宿に戻るか。そう思って振り向くと。
「レイチェル?」
レイチェルが、いない。ほんのわずかな時間、俺の目と頭はフル回転していた。
だが、なによりの証拠は耳から入ってきていたのだ。
馬車の音を、俺はいつからか聞き逃していた。
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